針葉樹の栽培品種
過去200年間、針葉樹の品種改良は変動しながらも加速し続けており、現在では世界の針葉樹種の約4分の1にあたる数千種類の栽培品種が、野生種や栽培種から選抜されています。近年では、およそ3,000種の栽培品種が流通しており、これは針葉樹の総種数の5倍以上に相当し、各種につき平均20種の栽培品種が存在する計算になります。この平均値には、1種あたり1つまたは数種類しか栽培品種がないものも含まれますが、一方で数百種類もの品種がある種も存在します。特に品種が豊富なのは、イブキ(Juniperus chinensis)(その交雑種Juniperus × pfitzerianaを含む)、オウシュウトウヒ(Picea abies) 、セイヨウイチイ(Taxus baccata)(その交雑種Taxus × mediaを含む)、ニオイヒバ(Thuja occidentalis)、カナダツガ(Tsuga canadensis)、ヒノキ属の3種(Chamaecyparis lawsoniana、Chamaecyparis obtusa、Chamaecyparis pisifera),これらの種になります。
本記事では、針葉樹の種全体を対象とするため、各栽培品種の詳細なリストや説明には触れていません。針葉樹の栽培品種のほぼすべては、栄養繁殖によって増殖される選抜個体であり、そのため、選抜時の特徴を維持し続けます。栽培品種の選抜は、樹形の変化(矮性化、細長い円柱形、枝垂れ、広がる性質 など)、葉の色(鮮やかな青色や黄色、斑入りなど)、葉の形状(通常より短い葉、糸状の葉、幼形葉が持続する形質 など) に、重点を置いて行われてきました。商業的に販売される矮性種や成長の遅い栽培品種の多くは、同じ種の野生個体と比較すると、同年齢でのサイズが小さい傾向にあります。一方で、生殖的な特徴(例えば、種子球果の早期形成や豊富な結実、未熟種子球果の色の変化)を目的とした栽培品種は、全体のごく一部にすぎません。
園芸店や専門店で見られる針葉樹の栽培品種は、もともと自然界や栽培中の木々から選抜されたものです。野生の木の中には、特徴的な形や色を持つものがあり、それらが品種として選ばれることもあります。ただし、これは新しい品種が生まれる最も一般的な方法ではありません。針葉樹の多くの種では、枝先に「天狗の巣」と呼ばれる密集した枝群が生じることがあります。これは病気による場合もありますが、一部の愛好家は、このような矮性の変異体を収集し、品種として固定することに取り組んでいます。また、多くの矮性種や成長が遅い品種は、大量の種子から育てられた苗の中から選抜されて生まれました。同様に、葉の色が変化した品種も実生から発見されることがあり、特に「枝変わり」と呼ばれる枝の突然変異によって、新しい品種が生まれることもあります。さらに、一部の種では、地面を這うように成長する枝を挿し木にすると、直立する主枝(成長点)を形成せず、横に広がる性質をそのまま維持します。この特性を活かし、横に広がる樹形の品種が誕生しました。
針葉樹の栽培品種は、同じ種の未選抜個体(野生種)よりも園芸環境に対する要求が高い場合が多く、注意が必要です。日照条件では、一部の色変異品種(特に鮮やかな黄色や青色のもの)は、最良の発色を得るために強い日照を必要とするものがあります。 一方で、直射日光が強すぎると葉焼けを起こし、葉が茶色くなり乾燥する品種もあります。また成長速度とスペース管理では、矮性種といえども生長を続けるため、5年、10年、20年後のサイズを見越して植える必要があります。 特に生垣に適したイチイ(Taxus)やニオイヒバオ(Thuja occidentalis)などは強剪定に耐えますが、ほとんどの針葉樹は古い木部への強剪定には適さないため、剪定は若いうちに軽く行うのが理想的です。最後に先祖返りでは、一部の品種(例:ドワーフ・アルバータ・スプルース Picea glauca ‘Conica’ や、多くの斑入り品種)で、枝の一部が野生種の形質に戻ることがあります。このような先祖返りは、栽培品種の特徴を維持するために剪定で取り除く必要があります。また針葉樹の栽培品種を選ぶ際には、植栽環境(日照、排水、土壌の酸性度、周囲の植物との調和) 、成長の最終サイズ(小型品種でも長期的には大きくなるため) 、剪定の必要性(強剪定に耐えるかどうか) を考慮することで、適切な品種を見つけることができます。栽培品種の特性は野生種とは異なるため、特に品種ごとの環境適応性を確認することが重要です。針葉樹の選択については、「Conifers Garden」などの参考情報を活用し、適した条件で植えることを推奨いたします。
著者 : James E. Eckenwalder
参考文献
- Eckenwalder, J.E. (2009) Conifers of the World: The Complete Reference. Timber Press, Portland.
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